東京高等裁判所 昭和31年(う)90号 判決
被告人 天野巽
〔抄 録〕
東京区検察庁検事の控訴趣意について。
被告人は昭和三十年九月二十六日東京北簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年に処せられ四年間右刑の執行を猶予せられ当時右裁判は確定したこと並びに原審が被告人の昭和三十年二月下旬頃から同年六月一日頃までの間における数個の窃盗罪(いわゆる併合罪の余罪)を認定した上被告人を懲役十月に処し四年間右刑の執行を猶予する旨を言い渡したにとどまり、刑法第二十五条の二第一項を適用して猶予の期間中被告人を保護観察に付する旨の言渡をしなかつたことは所論の如くであるが、本件記録を精査するに前に犯した罪が同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろうことは明らかであるから原審が昭和二十八年六月十日言渡の最高裁判所の大法廷の判決の趣旨に従い刑法第二十五条第一項第一号に則りその刑の執行を猶予したのは相当であると認められる。論旨はかくの如き場合においても同法第二十五条第二項第二十五条の二を適用し猶予の期間中保護観察に付するべきであると主張するのであるが、同条はその刑の執行を猶予せられた者がその猶予期間中再び罪を犯した場合に適用せらるべきであつて、本件の如きいわゆる併合罪にあたる場合には適用せらるべきではないものと解するのが相当であるから、論旨は到底採用できない。
(中村光 脇田 鈴木)